元JPモルガンのブロックチェーン主任Amber Baldetが考えるブロックチェーンのプライバシーとは?

元JPモルガンのブロックチェーン主任Amber Baldetが考えるブロックチェーンのプライバシーとは?

Tsuyoshi Kaji / 編集長
Tsuyoshi Kaji / 編集長
2018/10/26
今年2018年4月にボストンで開催されたカンファレンス「Business of Blockchain」はMITテクノロジーレビューとMITメディアラボDigital Currency Initiativeによって主催され、ブロックチェーンの技術、思想、社会への影響などのテーマでディスカッションが行われました。Economies2.0編集部ではこのイベントがとても有益なものだと考え、このイベントで扱われているトピックを取り上げることにしました。本記事ではJPモルガンのブロックチェーンチームでビジネス利用ブロックチェーン「Quorum」の開発を率いたAmber Baldet氏がQuorumプロジェクトを通じて得たブロックチェーンにおけるプライバシーへの意見を紹介します。

Amber Baldetプロフィール

JPモルガンでBlockchain Center of Excellenceを発足以来、組織を率い、Zcashと協力してQuorumを開発。現在は開発フレームワークを提供するベンチャーのClovyrを設立し活動中。2017年、Forbes誌の最も影響力のある40代以下の人物40人に選ばれた。

多くのチェーンが存在する。

Amber氏がまず始めにわかっておいて欲しいこととして、
ブロックチェーンは一つではなく、多くのブロックチェーンや分散型台帳が存在している。」ということを挙げています。Amber氏は現状をゼロサムゲームのような考え方が蔓延していると指摘しており、ビットコインマキシマリズム (ビットコインが唯一優れた仮想通貨で他は全て淘汰されるという考え) やパブリックチェーンまたは企業のパーミッションチェーンだけが重要であるという考えは愚かで、数多く存在するブロックチェーンはガバナンスなどが異なるためそれぞれ異なる役割を果たし、混ざり合って存在する状態に落ち着くだろうと予測しています。

プライバシーとは

Amber氏はブロックチェーンの中でもプライバシーに注目しています。
Amber氏によるとプライバシーに関しては「匿名性」「プライバシー」「コンフィデンシャリティ」の3つの概念があり、以下のように説明しています。
  • アノニミティ (匿名性):プライベートなのかパブリックなのかに限らず、行動の情報と身元の情報が関連しないということ。
  • プライバシー:開示したくない情報に不法にアクセスされないこと。
  • コンフィデンシャリティ (守秘):合意の上でシェアした情報が、権限を与えられた範囲外に流出しないこと。
ブロックチェーンにおけるプライバシーとは、どのようにこの3つをマネジメントするかということです。

ブロックチェーンにプライバシーを導入するために

強力な暗号化

プライバシー保つためには、ベースレイアーでは強力な暗号化が必要です。暗号化がシステム内のどんな人にも弱められてしまうシステムではプライバシーを保つことができません。特にオープンなグローバルシステムを作るなら、皆が賛成できるオープンな暗号化プロトコルが重要です。

選択的公開

暗号化の次に必要になってくるのは選択的公開です。
これは、管理権を持った誰かが全てに対してのアクセス権を持つのではなく、同意に基づいてその情報を公開するのか決めることができるのです。
選択的公開を行うための手法は様々ですが、JPモルガンはZcashと協力してゼロ知識証明の手法を採用し、quorumプラットフォームを作りました。Quorumでは自分が登録したレギュレータのみがトランザクション歴を見ることができます。
Quorumはゼロ知識によって強力な暗号化と選択的情報公開のバランスを取っているのです。

このように、選択的公開はパブリックとプライベートのハイブリッドなプライバシー保護ネットワークだと言えます。

そしてAmber氏は全てのことが分散化されて管理される必要はなく、プライバシー保護のためにはハイブリッド型の方が適切なこともあると主張してます。

ハイブリッド型が適切な例として、Amber氏は銀行を挙げています。
ここでは銀行は全てのデータをブロックチェーンで管理するのではなく内部データベースを保持し、ブロックチェーン上には内部データベースに保管している情報のハッシュやゼロ知識による証明書のような情報を保管します。そして、ビジネスにおける社外に流出してはならないような情報は内部データベースに保持します。

まとめ

Amber氏はFacebookの個人情報流出問題を例に挙げ、プライバシーの保護が迅速に解決すべき問題だとしています。しかし、ブロックチェーン単体はプライバシーの保護には適切な解決策ではなく、ブロックチェーンにプライバシーをもたらすためには、ゼロサムゲームのような考え方からパブリックとプライベートのハイブリッドなシステムへと移行していくことを考えていかなければならないと結論づけています。


参考

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