金融システムにおけるブロックチェーンの応用

金融システムにおけるブロックチェーンの応用

Kouta Takeuchi
Kouta Takeuchi
2018/12/06

本記事は、以前の記事『ブロックチェーンによる金融システムの分散化』の続きです。

まだ読んでいない方はこちらからどうぞ。

本記事では具体的な応用例をペイメント、アセット、投資 (リスクヘッジ) の3項目から具体的なプロジェクトと共に解説していきます。

ペイメント

上述の通り、ビットコインは世界で初めてP2Pの価値転送を可能にしました。イーサリアムも似たようなメカニズムを念頭に置いていますが、決済は個人間より個人と法人の間で行われる方が多い点に着目しています。

現在ビットコインイーサリアムもスケーリングの問題を抱えています。というのも、ビットコインは1ブロックには1MBの情報しか書き込めず、また、マイニングの速度が手数料市場に非常に左右されやすいため、手数料が通常の送金よりも高くなってしまっているのが現状です。

イーサリアムも、2017年のICOブームで、いくつかの大きな注目を集めたDappsがオンチェーン取引の需要を刺激し、手数料が高騰しました。代表的なのがNFTゲームのCryptoKittiesです。CryptoKittiesがクラウドセールを数日に渡って行った際、イーサリアムネットワークはダウン寸前でした。

そこで現在注目が集まっているのがレイヤー2技術です。オフチェーンでほぼ全てのトランザクションを処理し、オンチェーンは信頼性を補強するためのものとして利用する技術です。もしうまくいけば、分散性を保ったままオンチェーン上の処理を減らすことができます。

現在もっとも多くの開発者が注目しているのが、ビットコインのライトニングネットワークとイーサリアムが注力しているステートチャネルです。

ライトニングネットワークはペイメントチャネルの一種で、支払い取引をオフチェーンで行い、最終状態だけをオンチェーンに送信することでオンチェーントランザクションを減らすことを目指す技術です。

ステートチャネルとは、ペイメントチャネルを更に拡大し、支払いだけでなく、ブロックチェーンそのものの状態遷移もオフチェーンで行えるようにする技術です。例えば、スマートコントラクトのチェンジなどです。代表的なプロジェクトにSpank-ChainやCounterfactualなどががあります。

 

ステーブルコイン

仮想通貨を決済や価値貯蔵に用いる上での最大の問題の一つはボラティリティの高さです。価格の変動が激しすぎて商業や給料支払いに利用されにくく、ただ購入して保有するだけの方が利益をもたらすのが現状です。

仮想通貨の中でも人気が高く流動性の比較的高いBTCとETHですらボラティリティは7.71%と13.18%です。

ステーブルコインは安定した価値を保つようにデザインされてたトークンです。

現在は

  • TetherやTrueUSDなど、USドルを担保とした中央集権型IOUモデルのもの
  • MakerDAOのようなETHを担保にしたもの
  • Basisなど、無担保でシニョリッジ・シェアという手法で価格の安定を図ったもの

があります。

アセット

資産発行

ブロックチェーンは資産発行の過程を進化させました。特に株や債券のような交換可能な資産です。

今日の金融システムでは、発行のプロセスは手動のものが多すぎて、大量の紙を用いた処理が必要で、また、投資銀行、債券引受組合、規制当局、など多くの第三者を通すことになるため手続きが非常に煩雑でコストもかかります。

スマートコントラクトは、証券の発行に新しいパラダイムをもたらします。コストを減らし、資産発行のプロセスを民主化し、資産を形成できるものを増やします。

開発者は今や資産のデジタルrepresentationとかカストディ資金とか、これらの資産の交換とかをするためのコントラクトを簡単に作れるようになります。

例えば、イーサリアム場ではERC20規格のユーテリティトークンが急増しました。

インターネットや何らかのチュートリアルにアクセスできる人は誰でもイーサリアムのメインネット上にトークンを発行することができ、そのトークンをソフトウェアライセンスや資産の交換手段として機能させることができます。パブリックオファリングで売り出し、通常のエクイティと同様に扱うこともできます。

ERC20とスマートコントラクトにより、多くの手作業を自動化できると証明されました。カンパニーエクイティの作成や発表も簡単にできるようになります。

これらのトークンのうち、幾つのものが持続可能な価値を持つかはわかりませんが、価値発行が誰でもできるようになったのは大きな前進です。本質的価値はないのにも拘らず、ERC20トークンの時価総額は現在500億USD相当です。

同様にイーサリアム上のトークンで、ERC20は複製可能な資産をトークン化するのに対して、ERC721は任意のデータを何でもトークン化することが可能な規格です。NFTコミュニティによるERC721の登場で、何でもブロックチェーンアセットにできる可能性が高まりました。

最も注目されているユースケースはCryptoCollectibles、ブロックチェーン基盤のゲーム、デジタルアート、SNSなどです。

CryptoKittiesはNFTを利用してKittiesnoの独自性を確保し、Decentralandでは仮想現実スペースに代替不可能なデジタルの土地を作ることができます。Artonomousはアーティストが自分自身で独立的にデジタルアートを売ることができ、Userfeedsは代替不可能なアバターを作り、ソーシャルネットワーク内により良いトラッキングと価値を作りだします。

資産取引所

現在、暗号資産の転送がブロックチェーントランザクションの大部分を占めていますが、その多くが中央集権型の取引所で行われてきました。

中央集権的な取引所によってユーザーはフィアットと仮想通貨、または仮想通貨同士の交換ができるようになります。こういった取引所は使いやすく、マッチオーダーも簡単で、エスクローファンドも容易です。

しかし、こういった取引所はセキュリティや流動性の欠如、市場の脆弱性、不透明な金融インフラといった問題を抱えています。また、個々人が高いカウンターパーティリスクに晒され、ユーザーは自らの資産のカストディを取引所に完全に委ねることになってしまいます。

そこでこれらの問題の解決を図ったのが分散型取引所、通称DEXです。ここではユーザー同士が個人間で通貨の両替をし、秘密鍵を取引所が預かることもありません。

分散型取引所で有名な0xとAirswapの例を挙げましょう。

0xとはイーサリアム上のあらゆるトークンのトレードを円滑にするためのオープンプロトコルであり、スマートコントラクト群とメッセージ機能から成り立ちます。0x上に構築される取引所の特徴は、オーダーマッチングをオフチェーンで行い、オンチェーンで取引認証される点です。また、取引所そのものが資金のカストディを握ることは一切無く、オーダーマッチングはスマートコントラクトを通して行われます。

この仕組みにより、ユーザーは自分自身の資産の完全なコントロール権を持ち、P2P取引をすることができます。

Airswapも仕組みそのものは0xとほとんど同じなのですが、最大の違いはターゲット層を個人ではなく、マーケットメーカーとしている点です。マーケットメーカーとは、取引所より資格を得た値付け業者です。彼らに向けて、ASTトークンを保有していれば手数料フリーで取引できるようにしています。

投資(リスクヘッジ)

デリバティブ

デリバティブとは、本質的にはカウンターパーティ同士のリスク転送のための保険契約です。デリバティブ契約を利用するのは主にリスク分散をしたい企業と、潜在的な利益のためにリスクをとる投資家です。例えば、Facebookが一四半期で黒字を出したとします。そこで、余剰予算でその時点での株価に対してプットオプション形式で保険を購入します。するとその後株価が下落したとしても、その時点での価格以上の価格でシェアを売ることができ、株価下落の被害を抑えることができます。

ブロックチェーンは、本来第三者が仲介しなければならないデリバティブの仲介者を排除することで、手続きを簡略化して障壁を下げ、コストとカウンターパーティリスクも下げることができます。

例えば、分散型の予測市場プラットフォームAugurは、株価の上下を予測することで信頼の置けるリスク回避ツールとして用いることができます。

また、dy/dxのようなERC20トークンのデリバティブの生成、発行、トレードをするための分散型プラットフォームもあります。このプロジェクトでは、ERC20アセットの空売り市場を効率化することも目標としており、スケールのためにオフチェーン・オーダーブック+オンチェーン認証の仕組みを採用しています。このプラットフォームが完成すれば、あらゆる人がセキュリティと効率性を犠牲にすることなくより複雑で高度な金融ツールにアクセスできるようになります。

インデックス(株式指標)

インデックス(株式指標)とは、特定の資産の動きをトラッキングする手法として金融界で伝統的に使われてきたものです。株式指標によって投資家は経済の動きを包括的に測定し、特徴を掴むための指標としています。投資家は、リスクを最小限に抑えるために、株式指標と同じような値動きをするように組み合わせられた投資信託の一つであるインデックスファンドを購入することもあります。アメリカで最も人気のインデックスファンドはS&P500とDJIAです。

インデックスファンドは投資家がリスクを抑えるだけではなく、一つ一つの株式を吟味する時間やスキルのない一般投資家でも株式市場に参入する障壁を下げ、市場の流動性を上げる役割を果たしています。

ブロックチェーンによる分散型インデックスは、投資家のセルフカストディの利点を最大限化し、カウンターパーティリスクを減らし、現時点で指標の少ないデジタルアセットへの投資家へ向けて価値を提供するものとなっています。

既に走っているプロジェクトとしては、{Set}Protocolがあります。このプロジェクトでは、ユーザーは特定の分野のトークンを集めて担保にした抽象トークン{Set}を発行することができます。この{Set}は、通常の仮想通貨と同様にウォレット取引所で簡単に取引することができます。

これは、現実世界で個々の株を自分で評価するよりもインデックスファンドを買ったほうがリスクが低いのと同様に、個々にトークンを買うよりも優れた投資方法です。

将来、現実世界の様々な資産がトークン化され、トークンの値動きがビットコインではなく、現実世界の出来事に左右される社会が実現したとき、この分散型インデックスはさらに有用性を高め、金融界に不可欠のものとなっていくはずです。

 

融資

融資は、他のあらゆる金融機能と比較しても、経済のとても重要な部分を占めています。これまで、ローンを組むことが人々の経済活動を促進し、経済の成長を早めてきました。現在では、ビジネスのみならず、個人でも住宅ローンや車のローン、また、クレジットデリバティブや借金など、様々な形態のローンがあります。

ローンは確かに経済活動の頼みの綱ですが、現在の中央集権的なシステムではやはり弊害があります。

発展途上国に住むほとんどの人はローンにアクセスできません。その上、多くの融資合意は極めて不透明です。法外に高いペナルティレートであったり、故意の機密主義であったり、2008年の金融危機で目の当たりにしたように、この領域のプロセスは深い霧に覆われています。

 

このような融資合意のプロセスの第三者をなくし、融資の透明性とアクセス性を上げるためのブロックチェーンプロジェクトとして、Dharmaというものがあります。

このプラットフォームの概要は次の通りです。まず、債務者が証券引受人にアプローチし、証券引受人は債務者の信頼度レーティングに基づいて返済能力を評価します。受け入れられれば、債務者は負債オーダーにサインし、リレーヤーによって投資家へ向けて陳列されます。債権者が融資をしたいと思ったら、負債オーダーにサインして、自由に取引できるNFTトークンを受け取ります。債務者が返済をした際、そのお金はそのトークンを保有している債権者の元へ振り込まれます。スマートコントラクトを用いたこのような仕組みにより非常に透明性の高い融資を実現します。

Compoundのような、ユーザーが自分自身の保有するERC20トークンを貸し出し、それを担保に投資家の融資を募るようなプロジェクトもあります。

まとめ

ブロックチェーンのエコシステムが成熟するとともに、ブロックチェーンはあらゆる問題に対する万能薬ではなく、新しい経済繁栄のためのツールであるとことがわかってきました。

ブロックチェーンはあらゆる人々が基本的な金融システムにアクセスすることを可能にすることで、これまでそういったサービスにリーチできなかった人々が今よりも生計を立てることが楽になり、発展途上国の経済発展を早めます。また、アクセスの障壁を下げるだけではなく、検閲耐性や透明性、プログラマビリティを上げます。ブロックチェーンが金融システムを代替していけばいくほどこの価値は明確になるでしょう。

実際、既にライトニングネットワークは725,000USDを超えるネットワークキャパシティを持ち、0xのスマートコントラクトでは約1億8,000万USD相当が取引されており、100,000USD以上のローンがイーサリアム上に発行され、Augurではローンチから1週間で100万USD以上が賭けられました。

ブロックチェーンは実世界での応用方を模索し続けてきました。そして、結局ブロックチェーンが最もポテンシャルを発揮するものは何であるのか問い続けられてきました。ブロックチェーンが金融界にもたらす革命的な利益を踏まえれば、ここがブロックチェーンのフロンティアであるといえるのではないでしょうか?


参考

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