
トークンで医療をより身近なものに – ヘルスケアプラットフォームDocademicが作る経済圏とは?
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連載 #ユースケースからトークンエコノミーを知る では今までに行われたICOの中からトークンエコノミーを形成しようとしているものをピックアップし、ホワイトペーパーの解説を通してユースケースを紹介します。ユースケースを知ることで未来の経済圏にワクワクしていきましょう。今回はヘルスケアプラットフォームでトークンエコノミーの形成を目指すプロジェクト「Docademic」を紹介します。
Docademicの概要
AIとブロックチェーンを用いて、世界中の多くの人に質の高いヘルスケアを無料で提供することを目的としたヘルスケアプラットフォームです。
サービス
Docademicプラットフォームが現在提供するサービスは一般ユーザー向けのDocademic Appと医療提供者向けのDocademic for Doctorsの二つです。
Docademic App
一般ユーザー向けに、現在地に関係なく、いつでも無料でビデオ診察を受けられるアプリです。また、AIを用いた治療法の情報提供もしています。ユーザーの病歴や治療歴はブロックチェーン上に安全に保管されます。
Docademic for Doctors
医者やヘルスケア提供者向けのSNS、情報収集ツールです。世界中の伝染病情報や研究情報が共有されます。また、患者紹介も行えます。
ビジョン
Docademicの掲げるビジョンは、質の高いヘルスケアの民主化です。
医療技術の発達した近年、ヘルスケア業界の最大の課題はアクセスであると、Docademicチームは考えました。
現在、質の高いヘルスケアにリーチできるのは一部の特権階級だけなのが現実です。世界で最大のヘルスケア機関は病院ですが、病院では早急な治療が必要な時にすぐに診てもらえなかったり、患者が治療費を払えない場合、患者は必要な治療を受けることはできません。
また、健康に関する知識も一部の人しか手に入れることはできません。
例えば、西アフリカでエボラ出血熱が流行した際、あれほどまでのパンデミックが起こった最大の原因は、住民の知識不足による誤った対処です。
ER (救急救命室) などのサービスを気軽に受けられるようにしているヘルスケア機関はいくつかありますが、即時的で簡単にアクセスするきっかけのようなものが存在しません。普通の人はそもそも知識不足のため、プロに見てもらったほうが良いのかすらわからないのです。
Docademicは、この問題をブロックチェーンとAIを用いたヘルスケアプラットフォームによって解決しようとしているのです。
仕組み
Docademic Blockchain
Docademicプラットフォームは現在はイーサリアム上に構築されていますが、2019年中旬までに独自のブロックチェーンをローンチする予定のようです。
これは、既存のチェーンは決済と転送くらいしかできずヘルスケア産業には不十分であるため、ヘルスケア業界に特化したブロックチェーンを開発するためです。Docademicブロックチェーンは健康産業がスマートコントラクトを構築しやすいような言語も用意するようです。
このDocademicブロックチェーンでは、以下の三つの機能が実装されます。
- KYC/AML
- ノード管理(地域別)
- ヘルスケアサービスのフィーチャー
Docademicブロックチェーンは以下のように働くことになります。
1. 健康機関が情報をブロックチェーンに送る
Docademic Appの無料ビデオ診察の後、健康機関は患者の情報を既に使用しているITシステムに打ち込めば、その情報が患者のパブリックIDとともにAPIを通じてブロックチェーンに送信されます。
2. トランザクション完了、本人認証完了
各トランザクションはパブリックIDとともにブロックチェーン上に記録され、安全に保持されます。
3. 健康機関は直接ブロックチェーンにアクセスできる
患者の情報は本人かわからない匿名データとして(性別や年齢、病歴など)健康機関や研究機関がアクセス可能となります。
4. 患者は健康機関とIDをシェアできる
患者が秘密鍵を用いて健康機関に許可を出せば、健康機関はID付きで患者の情報にアクセスできるようになります。
何故ブロックチェーンが必要なのか
Docademicは完全無料で患者がビデオ診療を受けられるようにすることで、Docademicブロックチェーン上にできるだけ多くの患者のデータを蓄積することができます。そして今後は他の第三者の医療提供者がこれにアクセスできるようになったり、Docademicブロックチェーン上にアプリやDappsを構築できるようにして行く予定のようです。
MTCトークン
このプロジェクトでは、Docademicプラットフォームと既存のDocademicサービスをさらに向上させるガスとしてMTCというトークンを発行します。こちらも、現在はERC20規格のものですが、今後はDocademicブロックチェーン上に乗せていく予定です。
MTCの主な使い道は、
- Docademicプラットフォーム上の商品やサービスの購入
- オープンマーケットでのトレード
の2つです。
また、DocademicはMTCの利用法を限定するつもりはなく、業界等に関係なくBTCやETHのように一般的に流通させることを目標としています。
現時点のDocademicプラットフォーム上での使い道
現時点では料金支払いや、信頼担保、さらなるサービス開発への参加に利用されます。
具体的にはトークン保持者は
- 処方箋トランザクション料金や紹介手数料の支払い
- Docademicマーケットプレイスにおけるヘルスケア商品とサービスの購入
- その他 (大衆健康モニター、個人特化型の健康に関する自動メッセージシステム、ヘルスケア産業のための広告ツール等)
また、Docademic for Doctorsのネットワークで医療従事者は
- MTCをクレジットとした医療機器の購入
- 患者の病歴とか、リアルタイムの治療進捗等のデータへのアクセス
などのサービスにアクセスできます。
このように、MTCを介して患者と医者、その他医療やヘルスケア関係者をも巻き込んだネットワークが構築されて行きます。
今後
こちらのプロジェクトは、Docademicアプリが現時点で約20カ国で使用されており、また、John McAfee氏がアドバイザーとして付いていることから、今後ますます成長していくと考えられるでしょう。
ブロックチェーンのおかげで、世界中のどのような人でも質の高いヘルスケアにリーチできる日がくるかもしれません。