Bancorの抱く理念  【地域通貨とブロックチェーンの未来を考察する #2】

Bancorの抱く理念 【地域通貨とブロックチェーンの未来を考察する #2】

Takuya Shamoto
Takuya Shamoto
2018/11/24

本記事は連載「地域通貨とブロックチェーンの未来を考察する」の第二回目です。

前回の記事で、法定通貨を用いた取引は相互の信用を原則として行われていること、しかしその信用の適応範囲は実は絶対的なものではないこと、そこを補う取り組みとしての地域通貨を紹介しました。

しかし、今後地域通貨やトークンエコノミーが市民権を獲得していく過程で、避けては通れないであろう障壁があります。通貨同士の交換性・流動性の問題、すなわち経済学において欲望の二重一致問題と呼ばれる問題です。

今回は、その課題に新たなアプローチで取り組んでいるBancor (バンコール) プロジェクトを紹介します。

Bancorとは? 欲望の二重一致問題について

Bancorプロジェクトは、2017年6月に行われたICOにて3時間で1億5300万ドルを集めた世界中で注目を浴びている知名度の高いプロジェクトです。その調達金額は2018年11月現在、歴代のICO資金調達額のランキングでも10位に位置しています。

Bancor Protocolとは、一言で言えば、“スマートコントラクトを用いた、資産の流動性リスクへの技術的解決策”です。これだけだと初めての方には一体何のことかイメージがつかないと思います。

Bancor Protocolを正しく理解しようとすると、非常に難解な部分もありますが、地域通貨×ブロックチェーンにおいて本質的かつ重要な役割を果たしうるプロトコルなので、本記事では皆さんにその大まかな概要をできるだけ簡単に説明していきます。

 

ブロックチェーンが抱える課題

そもそも、未来の技術として期待を浴びているブロックチェーンには、今後の課題として以下の3つのテーマが挙げられます。

  • Scalability(拡張性)
  • Interoperability(相互運用性)
  • Liquidity(流動性)

それぞれの説明をここでは省略しますが、Scalabilityに対しての策としてはShardingやLightning Networkが出されており、Interoperabilityに対してはPolkadotやCosmosなどが取り組みの代表例として挙げられます。

それらと同じように、Liquidy問題に対するアプローチとして進められているのが、今回紹介するBancorプロジェクトです。

それでは、そのLiquidity(流動性)の問題とは一体なんなのでしょうか?まずはそもそもの前提となる“欲望の二重一致問題(Double Coincidence of Wants)”についてから説明します。

 

欲望の二重一致問題とは

例えば、あなたがりんごを持っていて、みかんと交換したいと願ったとします。その場合取引が成立するためには、「みかんを持っていて、りんごを交換したいと願っている人」の存在が必要になります。ある人がみかんを持っていたとしても、もしその人がメロンと交換したいと願っているのなら、あなたとの取引は成立することはないでしょう。

暗号通貨(仮想通貨)においても、この現象は発生します。今やどんな団体・個人でもトークンを発行することが可能になった時代であり、Ethereumプラットフォーム上のERC20に準拠したトークンだけでも、現時点でその数は2万を越えていると言われています。それらの大半はマイナーなトークンであり、欲しがる人は少ないものになるでしょう。そうなると当然、そのトークンを使った取引の成立は難しくなります。

果物が何万種類もあったとしたら、欲望の二重一致が起こる確率は果てしなく少なくなります。トークン(資産)を取得しても、それの交換・売買が出来ないのであれば、その資産に対する期待・価値は下がります。この現象は、トークンの数が乱立されていけばいくほど広がっていくのは目に見えています。これが経済学における“流動性のリスク”と呼ばれるものであり、すなわちブロックチェーントークンのLiquidityの問題です。

Bancorはホワイトペーパー内で、欲望の二重一致問題・トークンの流動性問題にアプローチしていくことを明確に記載しています。それでは、果たしてどのようにそれは解決されていくのでしょうか?

Bancor Protocol 概要解説

Bancorの基本的な考え方は、運営母体がトークン保有者と交換可能な準備金を用意しておくという考え方です。言い換えれば“準備金(親通貨)本位制”とも言えます。Bancor Protocolを活用した最初のトークンであるBNT(Bancor Protocol Network)を例に説明しましょう(概要のみの説明となります)。

 

スマートトークンとは

BNTはEthereumをベースに作られたトークンです。発行する際に準備金として親通貨であるEthereumを担保しています。仮にBNT保有者がそのトークンを手放したいと思ったとき、BNTを欲しがる第三者がいなくても問題はありません。運営母体であるBancorがいつでも買い取る(=準備されているEthereumと交換する)ことを約束しています。この仕組みがBancor Protocolのベースとなる仕組みです。このようにBancor Protocolに準拠して発行されたトークンのことを、スマートトークンと呼びます。

言い換えると、スマートトークンの保有者が流動性の問題を受けないよう、運営母体が親通貨を準備金(=Connecter Tokenとも呼ぶ)として保有し、いつでも交換可能な体制を敷いているのです。さらにその取引のやり取りは交換所を通さず、スマートコントラクト上でアルゴリズムにより瞬時に適正価格を判断され、取引が行われる仕組みになっています。

しかし、あるトークンに一度に売りの注文が殺到した場合、そのトークンの運営母体の準備金は枯渇してしまうのではないでしょうか?そういった事態が起こらないよう、Bancor Protocolのスマートコントラクトには常に準備金が担保されるような数式が記述されており、そのアルゴリズムに則り準備金の量は増減するようになっています(こちらのホワイトペーパーから数式は確認できます )。

スマートトークンは親通貨を準備金として担保していると紹介しました。担保されている準備金はスマートコントラクトのアドレス上に保持されているので、その仕組みを活かし、保有者と運営母体とのやり取りだけでなくスマートトークン同士のやり取りに関してもDEX上で自動的に取引を行うことができます。DEXでの取引となるため、サードパーティとなる取引所は介さず、手数料もかなり抑えられたものになっています。スプレッドも起きません。

さらにBancor Protocolは、スマートトークンと、そうではない通常のトークンとのやり取りさえも、トークンリレーという仕組みを活かしDEX上での取引を可能にしています。(トークンリレー、またはトークンバスケットについての詳細はまた別の機会に解説します。)

ここまで書いた内容をまとめると、Bancor Protocolの仕組みは以下のようになります。

  1. Bancor Protocolに準拠した、親通貨を準備金として担保した新規スマートトークンを発行する。
  2. 準備金はConnecter Tokenとして扱われ、スマートトークン保有者はいつでも運営母体、もしくは他のスマートトークンとの交換(売買)可能。その売買の際はスマートコントラクト上の計算アルゴリズムによって適正価格を自動で算出される。
  3. トークンリレーという仕組みにより、スマートトークンではない通常のトークンとの取引も可能。スプレッドなしで瞬時に売買できる。

元々はEthereumベースで始まったものであり、“Ethereum本位制”とも呼ばれていたBancorですが、最新のアップデートによりEOSを親通貨としたEOSベースのネットワークも展開しています。またBancorとEOSのクロスチェーンDEXとなるBancorXも公開しており、これによりBancor Protocolを通しEOSベースのトークンとEthereumベースのトークンを瞬時にDEX上で取引することも可能になりました。Bancorプロジェクトはますます目の離せないものになってきています。

Bancorの目指すコンセプトとは?

ここまでBancor Protocolの機能面の説明をしてきました。それでは、今回の連載のテーマである地域通貨とBancorはどのような繋がりがあるのでしょうか?

Bancorのホームページには以下のような表記があります。

WE are inspired by the chance to redesign the global economy from the ground up.

直訳すると”我々は、世界経済を新たにデザインし直すチャンスにインスパイアされている“という意になります。

彼らのプロジェクトの根底には、300年前から続く今の経済のあり方を見直し、人々によって産み出されるコミュニティ通貨によって、世界経済のあり方を再定義していく、そんな思想が流れています。そして更にその根底には、国際経済の安定を願って、第二次世界大戦時に経済学者のケインズとシューマッハーにより提唱され、結局実現されることのなかった超国家通貨の存在があります。

最終回となる次回では、その経済思想に触れていきながら、実際にBancor Protocolを用いたケニアの地域通貨の取り組みを詳しく見ていきたいと思います。


参考

 

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