ブロックチェーンにおけるガバナンスを考察する – 概要

ブロックチェーンにおけるガバナンスを考察する – 概要

Tsuyoshi Kaji / 編集長
Tsuyoshi Kaji / 編集長
2018/12/21

ブロックチェーン領域において「ガバナンス」という言葉がしばしば登場しますが、これはブロックチェーンを考える上で重要なテーマのうちの一つです。
本記事では重要なテーマであるブロックチェーンのガバナンスの概要を説明し、考察していきます。今回は具体的なプロジェクトのガバナンスの仕組みに関しては触れず、ガバナンスを理解するための枠組みとなるような記事になります。

ブロックチェーンのガバナンスとは

ガバナンスという言葉は文脈によって異なる定義で使われますが、ブロックチェーンの文脈では一般的に「プロトコルのアップデートに関する意思決定」という定義で使われます。プロトコルのアップデートとは、具体的にはブロック報酬の大きさや、クライアントソフトウェアの仕様の変更などのことを意味します。

なぜガバナンスが重要なのか

ブロックチェーンは本質的にコンセンサスプロトコル (= 全てのノードが一つの同意に基づいたルールに従うプロトコル) なので、全てのノードが互換性のあるソフトウェアを使用する必要があります。

そして、ブロックチェーンが公共財として、社会基盤として長期に渡って機能するためには、状況に応じた変化を遂げなければなりません。

いわゆる中央集権的なサービスは、中央管理者の意思決定に基づいて変化を加えることができる一方、ブロックチェーンは非中央集権的・分散的に管理されているため、特定の管理者が独断で変化を加えることはできません。つまりブロックチェーンにおけるガバナンスとは、ブロックチェーンに変化を加えるために、分散されたプレーヤーの中でどのようにコンセンサスを取るのかということです。
ブロックチェーンにおけるガバナンスの重要性にはこういった背景があります。

ガバナンスにおける重要な要素

ガバナンスでは大きく二つの要素が重要とされています。

インセンティブ:各プレーヤー (トークン保有者、ノード、開発者) はそれぞれ異なるインセンティブを持っている
ガバナンスモデル:どのように上記のプレーヤーのインセンティブのバランスを取りながらネットワーク全体の利益に貢献する形にするか

ガバナンスモデル

ブロックチェーンのガバナンスには大きく以下の二つの種類があります。

  • オフチェーンガバナンス
  • オンチェーンガバナンス

オフチェーンガバナンス

オフチェーンガバナンスというモデルではその名の通り、オフチェーン = ブロックチェーンから離れたところでプロトコルのアップデートに関する意思決定が行われます。この仕組みはイーサリアムビットコインで採用されています。

オフチェーンガバナンスでは基本的にEIP (Ethereum Improvement Proposals) やBIP (Bitcoin Improvement Proposals) という形でコア開発者によってアップデートの提案が行われ、開発者による相互のレビューの上でGitHubで開発が行われ、その後ノードのクライアントソフトウェアのアップデートとして変更がリリースされます。このアップデートをノードが受け入れて実行すれば変更プロセスは完了します。つまり、コードによって規定された条件に基づいて自動的にアップデートが行われるわけではありません。

オフチェーンガバナンスの場合、変更の最終決定者はノードであり、多くのノードがアップデートを受け入れなかった場合、ハードフォークが起こり、ネットワークが分裂する可能性があります。オフチェーンガバナンスでは、基本的にコア開発者しか提案や採択を行わないため、洗練されていな提案は混ざらないことになります。

 

オフチェーンガバナンスの問題点

オフチェーンガバナンスの最も大きな問題は透明性です。多くのアップデートの提案はビデオ会議がYouTubeで公開されたりオープンソースで開発されたりと、透明性を高める努力はされていますが、それでも決定がブロックチェーンの外で行われるため、透明性がないのではないかという指摘があります。

また、ノードは基本的にコア開発者の意思決定に従うことになるので、コア開発者という中央集権的なグループによって支配されているという批判もあります。例えばThe DAO事件が発生した際には、Vitalikを中心とする開発者たちによってハードフォークが決定されました。このような仕組みでは、もしコア開発者が悪意を持っていた場合ネットワークの崩壊につながる可能性があります。

このように非中央集権ネットワークであるブロックチェーンに関する決定が集権的とも言える方法でなされていることは大きな問題と言えます。

 

オンチェーンガバナンス

オンチェーンガバナンスとは、クライアントソフトウェアのアップデートが、コードによって規定された条件に基づいて自動的に行われる仕組みです。したがって、ノードがソフトウェアのアップデートを行うという意思決定を行わないということです。EOSなどの比較的新しいプロトコルに採用されているモデルです。

コードによって規定された条件の多くは投票です。プロトコルの変更に関する提案が、トークン保有者による投票に基づいて決定することになります。ここで決定された変更は、その後自動的に反映されます。つまり、オンチェーンガバナンスでは最終決定者はトークン保有者となります。

オンチェーンガバナンスは、集権的とも言える方法で決定がなされるオフチェーンガバナンスとは異なり、変更が分散的に決定されるため、公平性や透明性が保たれているという見方もできます。

オンチェーンガバナンスにおいて、意思決定に参加するための権利のことをガバナンストークンと言います。

 

オンチェーンガバナンスの問題点

オフチェーンガバナンスの問題点である集権性や透明性を解決しているように思えるオンチェーンガバナンスですが、問題点もあります。

一つ目の問題は、技術的に欠陥のあるアップデートや悪意のあるアップデートが受け入れられる可能性があるということです。これは、アップデート提案を開発者以外も行うことができるので、オフチェーンガバナンスで行われていたトップ開発者による検証プロセスを挟まないことになるからです。技術的に欠陥のある提案や悪意のある提案が採択され、実際にアップデートが行われた場合、ネットワークが崩壊してしまう恐れがあります。

二つ目の問題は、投票のインセンティブによってはネットワーク全体に対して十分な数の投票がなされないかもしれないということです。投票率が低い状態が続けば、悪意のある提案はより容易に採択されることになります。

まとめ

ブロックチェーンのガバナンスはまだまだ議論の余地がある分野です。オンチェーンガバナンスの仕組みを採用している多くのブロックチェーンプロトコルは新しいものが多く、オンチェーンガバナンスがどのような結果を引き起こすのかは、はっきりとはわかりません。前述したようにブロックチェーンのガバナンスにおいては、それぞれのプレーヤーの異なるインセンティブを持っています。それらをどのように取り扱うかがこれからも引き続き重要な議題になっていくでしょう。


参考

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