ブロックチェーン実用化における3つの障害

ブロックチェーン実用化における3つの障害

Kouta Takeuchi
Kouta Takeuchi
2018/09/11

世の中の天才たちがブロックチェーンスマートコントラクトの実用化について語り始めて数年がたちました。

このテクノロジーは、銀行やサプライチェーン、人の識別や本人認証に革命を起こすはずでした。いくつかの良い感じのケーススタディはありますが、多くのユースケースは、現実世界での実行までは及ばずにいます。

銀行を例にあげましょう。銀行は数百万の崇高な予測の中、最初にブロックチェーン領域に飛び込みました。金融機関はブロックチェーン特許の5分の1を保有していますが、IBMの推定では2017年時点で実際に利用しているのは15%程度です。多くのパイロットプロジェクトが実験されている現状で、この数字はあながち悪くはないですが、革命を起こすには程遠いでしょう。

では、ブロックチェーン技術の進化を妨げているハードルとはなんなのでしょうか?

ブロックチェーンに対する幻滅

障害の一つは幻滅です。ブロックチェーンの初期にあった熱は冷めてしまいました。新出のテクノロジーにありがちな現象です。

Gartner社の提唱するハイプ・サイクルはこの現象をうまく定義づけています。

新しいテクノロジーが出現し、人々がそのコンセプトに触れると、熱に浮かされ、その技術の実現しうることをあれこれ予測します。そして、熱に浮かされた人々は非現実的なところまでたどり着きます。ブロックチェーンは世界を変える!といったような。そして、次第にテクノロジーの欠点に気づくと、この熱は冷めます。ブロックチェーンは何にもならないじゃないか!と。この第三のステージを、Gartner社は幻滅の谷と呼んでいます。そして、この夏、ブロックチェーンは正式にそのフェーズに入りました。

Tim Swanson氏(テクノロジーアドバイザリー会社Post Oak Labs研究ディレクター、”Great Chain of Numbers: A Guide to Smart Contracts, Smart Property and Trustless Asset Management”著者)は、 “ブロックチェーンを推進する人たちがブロックチェーンの最初の原則に立ち返り、ブロックチェーンの何が良いのか、組織がどう利用できるかを明らかにしない限り、ブロックチェーンは永久にそこにとどまり続けるでしょう。”と言っています。

混乱

Swanson氏によると、最も大きな障害の一つは、単純に経営幹部レベルの人々の理解の不足です。しかし、これは驚くべきようなことではありません、と彼は言います。なぜなら、ブロックチェーンの共通の定義すら曖昧なのが現状だからです。

分散型台帳や共有台帳、プライベート、パブリック、コンソーシアムブロックチェーンなど、様々な用語が混乱を招いています。意思決定者たちが手をつけられないのも無理はありません。

そして、クリプトやブロックチェーン界隈のプレイヤーたちは、この問題に対処しようとはしていません。

200の進行中のICO規制当局の捜査やSNS上のブロックチェーン信者たちの宗教戦争を見てもわかります。

この領域にはノイズと、不適切に膨れ上がった期待が多すぎるため、新しく何が起きているかを知ろうとする人たちが、数々の戦争中のコイン派閥に騙されたり、侮辱されたりして、仕方なく両手を上げて撤退していまうのです。

価値の発見

Deep Analysis社のファウンダーのAlan Peltz-Sharpe氏は、組織はブロックチェーンの正しいユースケースを認識していないというのです。ブロックチェーンプロジェクトは、既存の中央集権ビジネスに、取るに足りない程度の価値を付け足しただけのものばかりだ、と言います。

ブロックチェーンは分散型の信用を必要とするアプリケーションと相性が良いです。これらのアプリの原生地は、参加者全員が互いを信頼しあわなければならない、ゆるく繋がったコミュニティです。複雑なエコシステムを伴う産業ということです。物流やサプライチェーン経営、ヘルスケア、法律、知的財産プロダクション、分配と賠償などです。これらは、生産性と効率性、アカウンタビリティの間に亀裂が入っている領域です。

これらはブロックチェーンが最も価値をもたらしやすい領域ですが、同時に剥ぎ取るのが最も難しい領域です。非中央集権型エコシステム内の異なる課題を持つ参加者同士は、中央集権環境や共通のインセンティブや既存の強い相互信頼ベースにいる人より、協力することが難しいのです。

Peltz-Sharpe氏いわく、“やるべきことは、他の領域のキープレイヤー、もしかしたら競合相手でも、をブロックチェーンに共感させ、前進させることです。そして、そこには誰にとっても良いと思えるポイントが必要です。現状こんなに多くのコンソーシアムチェーンがあるのに、今後の急速な展開のための最大の起点とはなるには程遠い理由は、これがないことです。

変化への対応

もし複数の組織が分散型データのコントロール権をシェアするのを厭わないパートナーたちのネットワークを構築できれば、その挑戦に成功はついてきます。

適切に実行されれば、非中央集権型のトランザクションやドキュメンテーションは、商業関係とインセンティブをシフトさせることで既存のビジネスモデルを壊すことはできるでしょう。そしてこれは、長い間確固たるポジションを謳歌し続けたステークホルダーを脅かすでしょう。

Plez-Sharpe氏はこう言っています。“我々が変化にうまく対応していかなければなりません。そうしないとブロックチェーンは失速するか、前進し爆発します。”

Plez-Sharpe氏いわく、技術自体はここでは問題ではないということです。

ブロックチェーンを構築する必要はありません。Hyperledgerのように既存の何かにぶちこめばよいのです”

パブリックブロックチェーンプラットフォームが未だパフォーマンスやスケーラビリティの問題で奮闘している一方、この産業はプライベートやコンソーシアムチェーンベースのモデルをサポートする技術プラットフォームを作っていました。Hyperledgerのexecutive directorのBrian Behlendorf氏もテクノロジーを執着すべきポイントとは思っていません。彼は、進化するべきはテクノロジーを取り巻くエコシステムだと言っています。

“三つの最大の障害は、分散型台帳システムを構築するためのディベロッパーの才能を見つけて保持するのが難しいこと、プロダクションで実際に稼働しているブロックチェーン技術の例が少ないこと、サポート、ホスティング、開発、インテグレーションのための商業的オプションがないことです。

これらのすべてはブロックチェーンがゆっくり進化していくことを指し示しています。エコシステムの構築には時間がかかります。ちょうど理解を構築するのに時間がかかるのと同様に。だから、凶暴なジェットコースターのような期待と失望のあと、Gartner社のハイプ・サイクルが長く穏やかな傾斜を描くのです。

この徐々に幻滅期から回復期にかけて、テクノロジーをとりまく安定したエコシステムが育ち、大衆からの理解が深まります。人々はその技術で現実的に実現できないことを正しく認識し、期待値を調整し、前進します。机上の空論である世界変革アイデアが、増加する進歩をもたらす別のツールになります。

ブロックチェーンも将来的にはそこに落ち着くでしょう。ブロックチェーンを取り巻く環境が進化すれば、先にあげた弊害が大したものではなくなり、これらのケーススタディが、公共で活用され、受け入れられていくはずです。

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