現実資産のトークン化の可能性と課題

現実資産のトークン化の可能性と課題

Tsuyoshi Kaji / 編集長
Tsuyoshi Kaji / 編集長
2019/02/22

先日「Non-Fungible Tokenのビジネスユースケースを考察する」と題し、NFTを価値づける性質やその応用領域について概観しました。

NFTはその唯一無二という性質上、応用領域は大きく以下の二つの分類することができます。

  • identity (身分証明)
  • ownership (所有権)

本記事ではその一つであるownershipに着目し、real asset tokenization (現実資産のトークン化) について解説し考察していきます。また、現実資産のトークン化では必ずしも常にNFTが使われているわけではありません。そのため、fungible tokenを使った例も取り上げます。

現実資産のトークン化

現実資産のトークン化という概念はシンプルに、現実に価値のある資産の所有権となるトークンブロックチェーン上に発行するということです。

現実資産トークン化のメリット

現実資産をトークン化することによって得られる利点は主に以下の二つです。

  • 流動性の向上
  • 資産の取引コストの削減

流動性の向上

流動性とは資産のトレードのしやすさを表します。単価の高い資産などを多数のトークンに分割化することで、最低購入単価が引き下がるためマーケットへの参入障壁が下がり、流動性が向上します。また、資産をトークン化してブロックチェーン上で管理すれば、場所や時間が限定されることなく資産にアクセスでき、P2Pの取引も可能になるため流動性が向上します。

資産の取引コストの削減

現実資産の所有権がブロックチェーン上にオープンに記録され改ざんリスクを削減できることにより、取引における不正防止のための監査コストや取引者間の信用を担保するための中間業者を排除することができます。

 

その他にもトークン化する資産によって様々な利点を与えることができますが、大きくは以上の2つの利点があります。

ユースケース

実際のプロジェクトと共に現実資産のトークン化を理解していきます。

TrustToken

TrustTokenは様々な現実資産のトークン化プラットフォームで、以下を含むあらゆる現実資産のトークン化を想定しています。

  • 有価証券
  • 株式
  • 債券
  • 賃貸不動産
  • 会員権
  • 法定通貨
  • USドル
  • ユーロ
  • コモディティ
  • 石油

現在、実際にトークン化されているものにはUSドルがあり、TrueUSDとしてUSドルをステーブルコインにトークン化しています。

TrueUSDはUSドルを担保に発行されるため、購入者はTrueUSDの信託口座にUSドルを送金し、検証・確認され次第、信託会社によってTrueUSDを発行するスマートコントラクトが実行され、購入者のアカウントに送金されます。

TrueUSDの信託口座には常時担保として送金された額USドルが保管され、ペグを保っています。この口座は第三者機関によって定期的に監査され、透明性を保持しています。(参照)

 

不動産のトークン化プロジェクト

過去の記事で取り上げた通り、既存の不動産という資産は以下のような問題を抱えています。

  • 分割が難しいため、取引単価が高い
  • 取引の手続きが煩雑
  • 換金に時間がかかる
  • 物件の劣化など、リスクが高い

不動産が大きな市場を有していることに疑いはなく、これまでもREIT (不動産投資信託) など、投資の敷居を下げようと試みられてきました。

しかし、REITが最低投資金額を下げある程度流動性を上げ、投資リスクを分散させていることは間違いありませんが、積極的なトレードやピアツーピアのトレードには対応していません。

する資産ではありません。また、複数の不動産に分散投資することはできますが、不動産自体の分割所有は実現できていませんでした。

 

実際に不動産のトークン化に取り組んでいるプロジェクトには以下のようなプロジェクトがあります。

どちらのプロジェクトもトークン化による不動産の分割で流動性の向上を目指すプロジェクトです。

blocksquareは2018年にICOを実施しており、その際に発行したトークンを使ってトークン化された不動産に投資を行う仕組みになっています。一方MeridioはConsensysのプロジェクトの一つで、独自のトークンは発行しておらず、トークン化した不動産へはETHまたはイーサリアム上に発行されたステーブルコインであるDAIを使って投資を行うことができます。

現実資産のトークン化における課題

ここまで現実資産のトークン化の良い面のみに触れてきましたが、もちろん課題も多くあります。

  • 規制

現実資産をトークン化では、そのトークンが証券に分類されるケースも多くあります。また、上記のプロジェクトは全て、資産トークンの購入時にKYC/AMLの手続きを行う必要があります。これは参入者を制限することに他なりません。さらに、規制によってKYCの手続き済みのアカウントアドレス間でしかトレードできないとされた場合、大幅にマーケットが制限されることになります。これは流動性の低下を意味します。つまり現実資産のトークン化の肝である流動性の向上を打ち消されてしまいます。また、KYC業者や監査業者が介入する場合、中間業者の排除による取引コストの削減も打ち消されてしまいます。

  • オラクル

ブロックチェーン外部にある現実資産に関する情報をいかにブロックチェーンに提供するかという問題です。

つまりトークン化された現実資産の所有権の証明はブロックチェーン上で記録されますが、実際の資産の移動が記録されるわけではありません。上に挙げた3つの例では当てはまりませんが、例えば、アート作品をトークン化しブロックチェーン上に所有権を記録したとします。このトークンが二次市場に流通していく際、実物が不正なく新たな所有者の手元に移動するということの保証はブロックチェーン上では不可能なので、その点に関しては信用を担保する第3者を介入させる必要があります。これも中間業者を増やすことに他ならず、取引コストの削減という利点を打ち消す可能性があります。

まとめ

現実資産のトークン化は新たな市場を形成し流動性の増加させたり、ブロックチェーン上に記録することにより改ざん耐性と透明性を保つことができるという利点を持つ反面、規制やオラクルにおける問題によって利益が損なわれる可能性があるという現状があります。

規制はテクノロジーのように速くは発展しません。そのため、現実資産のトークン化が真価を発揮するにはまだまだ時間がかかるでしょう。


参考

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