Cryptoeconomics Lab CEO片岡拓氏インタビュー #2 ブロックチェーンが創り出す世界とは

Cryptoeconomics Lab CEO片岡拓氏インタビュー #2 ブロックチェーンが創り出す世界とは

Tsuyoshi Kaji / 編集長
Tsuyoshi Kaji / 編集長
2019/02/14

前回のおさらい

前回、「数珠つなぎインタビュー」の第1弾としてCryptoeconomics LabのCEOである片岡拓氏にこれまでの経歴からブロックチェーンに賭ける理由となったジャカルタでの原体験について語っていただきました。

まだお読みになっていない方はこちらからどうぞ。

第2回となる今回は前回より一歩踏み込み、Cryptoeconomics Labのビジネスとしての戦略やブロックチェーンで変わる世界や社会構造についてお話を伺います。

以下、インタビュー内容。

マネタイズの難しいコアテクノロジーのビジネス戦略とは

株式会社である以上利益を出すことは必須かと思われますが、ビジネスとして、またマネタイズに関してどのような戦略を立てていますか?

片岡:目的を達成するための手段としてキャッシュが必要なのは間違いありませんし、株主がいるので株主に還元することはもちろんですが、顧客満足・社員満足・社会満足があってその上に株主の利益が成り立つと思っています。ですが、もちろんビジネスにしないとサステナビリティーがありません。会社として大きくならないと与えられるバリューが小さくなるので、もちろんビジネスにはしていきたいです。

どういうビジネスにしていこうかというのは、まだビジネスモデルは見えていませんというのが正直なところです。基本的な考えとしては、Plasmaの運用でマネタイズしていくことができると思っています。Plasmaはとても面白くて、いわゆるPoAで良い、つまり中央サーバーでいいんです。それでもセキュリティは守られるというのがPlasmaの面白いところです。Plasmaチェーンは誰かが立ち上げ、オペレーターという役割をする必要があります。

それを事業として僕たちが担うか、もしくはSaaSとかPaaS、AWSのようにサーバーを立ち上げ、その上にPlasma Chamberを乗せて、そのPlasma Chamberのライブラリを使うことに対して月額料金がかかるというモデルもできますし、受託開発のように一件一件カスタマイズすることもできると思います。とはいえ今は何よりまずコアテクノロジーをちゃんと作りきらなければなりません。僕らはテクノロジーカンパニーなんで、ピーターティールが言っているように自社のテクノロジーが他の会社より10倍優れている状態じゃないと競合優位性がないので、10倍ぐらいテクノロジーが優れているという所をまず目指すことが全てだと思っています。マネタイズはその後に色々ありえると思っています。

 

では今はビジネスモデルよりも技術の研究開発にフォーカスしているということですか?

片岡:とはいえ、ブロックチェーン業界ではとにかく生き延びることが大事だと思っています。今この業界は冬だと一部では言われていますが、やはり単純に普及するのに時間かかると思います。生き延びることができなければ何も波には乗れません。

そういう前提を置いた時に、生き延びるためのいわゆるライスワークのようなこともする必要はありますが、それはあまり自社のコアテクノロジーに影響しないのでやりたくありません。元々は自社のコアテクノロジーと関係ない受託もしていたのですが、今はお金をいただくクライアントワークもほぼスケーラビリティだけです。そのクライアントワークによって毎月収益が上がりつつ資金調達もして、今後何10ヶ月と生き残れる体制を作っていっています。

ブロックチェーンという技術は時間がかかるのは明確なので、そこはやはり生き延びることが何より大事で、生き延びながら打ち続けていたらチャンスを絶対回ってくると思っています。生き延びながら足腰を鍛えていきたいです。やはり大事なのは「タイミングと事業領域」、何をやるか、いつやるかだと思っています。

ブロックチェーンで世界はどう変わる?

長期的に見てブロックチェーンによって世界・社会構造はどう変わっていくと思いますか?

片岡:僕らは特にプライベートチェーン・コンソーシアムチェーンではなくパブリックチェーンに全ベットしています。そこでパブリックチェーンの性質とは何だろうと考えるといいと思っています。どんなテクノロジーにも言えることですが、テクノロジーは多くの人が思っているほどジェネラルに使えず、特定のことにしか使えません。しかし、ある特定の分野においては、皆が思っている以上に成果を発揮するというのがテクノロジーの特徴だと思っていて、同じようにブロックチェーンにも限界があると思います。

コンソーシアムチェーンはセキュリティリスクなどを緩和できるので、いわゆるサイバーセキュリティという名目で価値がありますが、僕らがコンソーシアムチェーンではなくパブリックチェーンに張っているのはなぜかというとコンソーシアムチェーンにはイノベーションのジレンマはないからです。つまり、大企業がサイバーセキュリティをした方がいいということには全員同意しますよね、だから一番優秀なエンジニア、一番大きな予算を持っている大企業がやればいいことで、それはベンチャーが挑む課題ではありません。

パブリックチェーンの性質は何で、どういうユースケースがあって、なぜベンチャーがパブリックチェーンに挑むべきなのかというのを問い続けることが大事だと思います。僕はいわゆる取引コストとか、ソーシャルコストとか、信用コストとか言われているものを無くすために使われる方向に進むと思っていて、領域はもう二つしかないと思っています。

一つはTo G、ガバメント。政府の機関はどうしても不正をしたくなると思います。インドネシアでの話もそうですが、権力を持っていると不正ができてしまいます。しかし政府は絶対に不正をしてはいけない、国民によって支持されているべきですから。にもかかわらず昔から談合などがたくさんあるわけです。最近だと卑近な例ですが幼稚園は抽選とは言っているものの推薦状があるんですよ。これはどう見ても抽選のプロトコルじゃないですよね。談合にしても入札の部分を全部オープン化してしまえばいいし、幼稚園の例にしてもちゃんと乱数生成してブロックチェーン上に抽選できるようなプロトコルを置いておけば解決できます。パブリックであるべきなのにパブリックではないもの、公正さが求められるのに公正ではないものって結構あると思います。

一方それは企業プロセスに基本的に当てはまるとは限りません。例えば銀行の講座に100万円お金があり、それを銀行が盗むかという話です。100万円を盗んだときのリターンと、それが発覚したときの時価総額の下がり方、つまり100万円を盗むコストのどちらが高いかというと、信用を失うというコストの方が高いのは自明です。にもかかわらず信用を失う行動をするのかという話です。先進国ではそれが完全にストッパーになっているので僕は基本的にパブリックチェーンは先進国においては現状必要とされていないと思っています。

今後もしかしたら新しい産業ができて信用に何らかのパラダイムシフトが起きるなどして信じられなくなったときに、もしくはブロックチェーンを使っていればこの会社は絶対に信用できるという共通認識ができれば変わるかもしれませんが、基本的には今の日本のように信用を失うコストが高い国での“企業プロセス”には合わないと思っています。なので先進国でユースケースがあるとしたらガバメントのプロセス、政府のプロセスや上場企業のプロセスとかではないかと思っています。

一方、新興国は、面白いことに信用を失ってでもお金を盗む人がいるんです。これがもう一つの領域です。なぜ信用を失ってでもお金を盗む人がいるかというと、信用が発達していないからです。信用を失うことのコストが低く、お金を得ることリターンの方が高いんです。ですから新興国では企業プロセスにもパブリックチェーンが使えるし、もちろん政府プロセスにもパブリックチェーンが使えます。僕らも日本でパブリックチェーンを広めて行きたいという気持ちはありつつも、やはり当てはまる例が極めて少ないと感じています。なので基本的には途上国の信用が置けない、トラストできないという領域にトラストレスを実現していくというところに価値があるのではないかと思っています。

 

トラストレスという概念は信用が発生しているところ、信用に頼り過ぎているところを置き変えるような印象を抱きがちですが、そもそも信用できないところをトラストレスという形で解決したいとお考えなんですね?

片岡:そうですね。僕たちはいつも「攻撃を考えろ」「攻撃がないところにブロックチェーンはいらない」という話をしていて、どういう攻撃があるんだろうと考えるんです。攻撃には第三者攻撃と内部からの攻撃の二つがあり、第三者攻撃と言われる際はセキュリティリスクですよね。これはコンソーシアムチェーンで比較的防ぐことができます。しかし内部のリスクとなるとコンソーシアムチェーンでは防げません。ですが先ほどの話のように内部不正を起こす人は限られています。新興国、ベネズエラとかインドネシアなどはおそらく当てはまると思います。こういうところに関しては積極的にブロックチェーンを使っていった方がいいと思っています。

金融領域への活用などはよく言われてますがコスト削減という観点から考えると「コントラクトで自動執行できれば色々な点で監査コストを減らせる」くらいの話でしかないと思っています。証券法とか金融系の法律って全部厳しいですよね。あれはなぜ厳しいかというと彼らが不正できないためなんです。自動執行で監査コストを減らすことができれば、ああいった法律は要らなくなると思います。

 

そういった世界観の実現に会社としてどう関わっていきたいですか?

片岡:Cryptoeconomics Labとしては、ブロックチェーンに対して長期的な視点で取り組んでいき、資本主義や民主主義をアップデートできるような技術にすべく挑戦していきたいと思っています。

 

本インタビューでは数珠つなぎインタビューとして、次のインタビュー先を指名していただいています。ブロックチェーン周辺領域で活動されている片岡さんのお知り合いの方をご紹介ください。

片岡:僕からは以下の4名を指名したいと思います。

みなさんそれぞれ別の視点を持って課題解決に取り組まれている方々で、大変興味深いお話をしてくださると思います。

貴重なお話をしていただき、ありがとうございました。

 

Cryptoeconomics Labの片岡氏へのインタビューはこれで以上となります。片岡氏に取材をした際、同社のCTOである落合渉悟氏を交え、Cryptoeconomics Labでの働き方についての対談を行っていただきました。次回はその対談の様子をお伝えします。お楽しみに。


Cryptoeconomics Lab:https://cryptoeconomicslab.com/

片岡拓氏 Twitter:https://twitter.com/t_kataoka_0629

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