Cryptoeconomics Lab CEO片岡拓氏インタビュー #1 ブロックチェーンに賭ける理由

Cryptoeconomics Lab CEO片岡拓氏インタビュー #1 ブロックチェーンに賭ける理由

Tsuyoshi Kaji / 編集長
Tsuyoshi Kaji / 編集長
2019/02/13

はじめに

今回から始まるインタビュー企画は、次のインタビュー先をインタビュイーが指名する「数珠つなぎインタビュー」として、ブロックチェーン周辺領域で活躍される方々に次々お話を伺っていきます。

第1弾として今回は、福岡に拠点を置きPlasmaを始めとする最先端技術で日本のブロックチェーン技術を牽引するCryptoeconomics LabのCEOである片岡拓氏にお話を伺いました。

以下、インタビュー内容。

不動産スタートアップ、飲食店経営を経てブロックチェーン領域へ

片岡さんは大学在学中から不動産領域でスタートアップをされていたと伺っています。これまでの経歴について詳しく教えてください。

片岡:はい、そうです。もともと高校が慶應高校で、勉強をしなくても留年しない限り大学に上がれる環境だったので高校時代はあまり勉強をしておらず、音楽に打ち込んでいました。その反動で大学に入ってからはきちんと勉強をしようと思い、大学1年から会計を学び始め、公認会計士を目指していました。それから次第に会計を活かしたことがしたいという気持ちに変わり、じゃあ商売をやってみようと思ったのが大学2年の時です。

大学2年の時に偶然インターンをした会社がとてもいい会社で、別の会社の子会社のような会社だったので、ずっと社長と2人で仕事ができ、その方に色々とビジネスのいろはを教えてもらいました。その方に「どうせ暇だったらビジネスプランコンテストでも出てみないか」と提案されてビジネスプランコンテストに出たところ、偶然そこで出会った先輩がリブセンスの村上太一さんで、リブセンスから出資を受けて創業した会社が不動産の会社になります。それが2013年のことで、21歳の時に1社目を創業しました。

不動産の仕事は、一言で言うと「無店舗型仲介」というものです。店舗型の不動産屋はたくさんありましたが、本当に必要なのか疑問に思ったんです。多くの人はインターネットで探していますし、物件待ち合わせでいいのではないかと。店舗をなくした分だけ店舗で待機している人件費もいらないし店舗のコストもかからないので、その分をお客さんに還元すればマーケティング的に事業として伸びるんじゃないかと思い始めました。

結果として顧客満足度は高かったのですが集客がおぼつかない状態でした。そこで、出資元の村上さんのリブセンスがやっていて集客に成功しているバーティカルメディアと、うちのオペレーションを組み合わせたら上手くいくんじゃないかという発想でリブセンスに会社を吸収していただきました。それでリブセンスの社内に入り、不動産事業部のマネージャーをやりながら自分の無店舗型仲介サービスとリブセンスの事業をどう組み合わせるのかということを考えていました。リブセンスには1年いたのですが、これから一人の人間として考えた時に日本だけじゃ絶対に経済は回らないと思い、海外に行って仕事することを決めました。

当時から海外に行ってみたいという思考はあったものの全然行ったことがなかったので、とりあえずたくさんアジアの国を回ってみることにし、その中でインドネシアのジャカルタがいいなと思ったのでジャカルタでビジネスをやることにしました。初めは寿司屋をやろうと思っていたのですが、寿司屋はすでにたくさんあり、全く勝てそうになかったので寿司屋ではなく焼肉店をすることに決めました。実は今も焼肉屋は続けていて、「Waki Japanese BBQ Dining」という名前でやっています。それが2年くらい前のことです。この焼肉屋はありがたいことに、ジャカルタの食べログのようなZomatoというサイトで4.9/5という評価をもらっています。

初めは肯定できなかったブロックチェーンとの出会い

ブロックチェーンについてどのように知り、どういったところに惹かれたのですか?

片岡:ブロックチェーンに関しては4、5年前にサトシナカモト論文を1回読んでいましたが、ビットコインというものがあるんだというだけで何も理解していませんでした。その後はメディアがビットコインの価格ばかりに執着していたので、資本主義を過熱させているようにしか思えませんでした。僕は基本的に今の中央集権的で資本主義的な仕組みはいつかワークしなくなるのではないかと疑問に思っていたので、ビットコインはその当時資本主義の権化だと思えて肯定的には見ていませんでした。ただ、これだけ多くの人が注目しているということは何かあると思い、興味は持っていました。

Cryptoeconomics Lab設立に至ったジャカルタでの原体験

そこからなぜCryptoeconomics Labを設立しようと思ったのですか? 

片岡:実はジャカルタでの経験がCryptoeconomics Labの設立に大きく影響しているんです。ジャカルタにいた時に大きな発見があり、途上国にはやはり信用がないということを知りました。政治の腐敗とか汚職とかが蔓延しており、中央集権的な仕組みに疑問を持ったんです。きっと、どの新興国も同じジレンマを抱えていて、腐敗しないインフラシステムを作らないと人民に力が渡らないということを感じました。そして、インドネシアで資本主義の限界が来ているのではないかと感じていました。

焼肉屋を経営する中でわかったことは、経済格差が酷いということです。焼肉屋の従業員は月3万円の給与で働いています。彼らは田舎から出てきて大学も卒業しており頭も良く、すごく真剣に働いているにもかかわらず月3万円。一方インドネシア華僑のような人たちがいて、彼らは相続税も贈与税もないので両親からもらった資産が多くあり、それを現地の大手銀行の定期預金に入れておけば年利7%くらいで回るんです。彼らはそれで一生暮らしていけるわけです。僕は両方と仲が良く、インドネシア華僑の人とは1万円くらいのご飯を食べに行ったり、従業員とは100円くらいの屋台を食べに行ったりしていました。しかし彼らのどちらが優秀なんだろうとふと考えると、従業員の方だったりするんです。しかしこの資本主義の構造は一生変わりません。これが僕の原体験です。

もう一つ重要なジャカルタでの出来事はCTOの落合と出会ったことです。落合がVIP PLAZAというインドネシアのファッションEコマース企業のCTOをやっていて、2017年の11月にたまたま出会いました。この時期はビットコインの価格とかがすごく上がっていて、多くの人が注目していた時期でした。その時に初めて落合と出会って言われたのが「ブロックチェーンに興味ある?」でした。僕が「資本主義を加速させているようにしか見えなくて、あまり興味ない」と言ったところ「いや片岡くん逆だよ、資本主義をリビルドする可能性があるんだよ」と言われ、それだったらやるしかないでしょうとなったのです。

ブロックチェーンはあくまで課題解決手段の一つとして世界を変えられる可能性があるというだけではあると思っているのですが、インドネシアで感じた課題を解決できる手段としてブロックチェーンに魅力を感じました。やはりインドネシアに行って良かったと思います。焼肉屋はもちろんですが、そこで落合と出会ったことも、そういう原体験ができたことも。

落合は元々ずっとイーサリアムの研究をしていたので、ブロックチェーンビットコインイーサリアムなどについて0から教えてもらいました。この時期から会社を設立しようという話になりました。事業に関してはお金とか価格とか、そういうものはすぐにコモディティ化しますし、今がバブルだということがよくわかっていたので、そういうものではなくコモディティ化しないコアテクノロジーに張りたいと落合と話していました。

会社の設立に関して、初めはファウンデーションのような形態でもいいかなと思っていました。とはいえまだ一番コアなプロトコル、ビットコインイーサリアムICOがフィットするモデルだと思いますがその上のレイヤーに関してはまだICOとかユーティリティトークンとかがフィットするか分からないという状態だったのでICOはしたくありませんでした。それならきちんと株式会社として、なおかつ僕は日本が好きなので日本で立ち上げ、日本のエンジニアとか海外のエンジニアとか関係なく一緒に働きたい、そして日本にまだマーケットがないので海外のマーケットをちゃんと取っていく会社にしようという趣旨でCryptoeconomics Labを設立しました。

ブロックチェーンの未来とPlasmaに賭ける理由

ブロックチェーンのコアテクノロジーの中でもPlasmaに賭けるのはなぜですか?

片岡:事業としてコアテクノロジーに張っていくと決めてから一番最初に考えていたのはインターオペラビリティでした。コアコンポーネントの部分だけをずっと触って行こうということだけを決めて、色々考えてディスカッションして実際触ってみてというのを繰り返している中で、分散型オラクルなども考えていました。どれもあまりしっくりこない中で落合が急にPlasmaだと言い出して。初めはよくわかりませんでしたが、説明してもらって納得しました。

Plasmaというのは簡単にいうと非中央集権性、スケーラビリティ、セキュリティといういわゆるブロックチェーンのトリレンマ、3つのトレードオフがある中で特にセキュリティを損なわずにスケーラビリティを実現する面白いプロトコルで、落合を中心に何人かでPlasmaのホワイトペーパーを日本語に訳しました。

会社として長期的には先ほど話した資本主義のリビルドのようなところ目指していますが、それを達成するための短期的な一歩目はなんだろうと考えました。そして、確実にスケーラビリティに限界が来ると考えたんです。それはVitalikとか誰でも言っているようなことで、どうしてもスケーラビリティの解決方法はイーサリアムでいうとシャーディング、ステートチャネル、サイドチェーンぐらいしかない中で、サイドチェーンの中でもPlasmaが一番有望そうに見え、かつビジネスとしても成り立つだろうという目算のもとで始めました。

Plasmaにはmintとかburnという新しいトークンを生み出したり焼却したりするコントラクトはおけません。それをやるとPlasmaは自壊する可能性だとか、withholdを食らう可能性もあるので。しかしイーサリアムの上に大事な金庫のようなコントラクトだけは置いてあります。最終的に状態遷移や送金系のコントラクトなどは全部Plasmaに移行すると僕らは踏んでいるんです。なのでPlasmaとかサイドチェーンこそ、ある意味実際のトランザクション実行数でいうメインチェーンになると思っています。

とはいえまだPlasmaを作るには技術的コストも経済的コストも高いので、そういう課題を解決するために、今Plasma開発のためのライブラリーであったり言語やVMを作っています。こういったコンポーネントが揃ってくることでより様々な人がdAppsを作れるようになっていく、そう考えるとサイドチェーンというのはブロックチェーンにおけるAWSとかAkamaiのように極めて大事な産業になるんじゃないかと思っています。これがコアテクノロジーの中でもPlasmaに賭ける理由です。

 

第1回はここまでになります。第2回ではCryptoeconomics Labのビジネスとしての戦略、そしてブロックチェーンで世界や社会構造はどのように変わっていくのかについて語っていただきます。是非お楽しみに。


Cryptoeconomics Lab:https://cryptoeconomicslab.com/

片岡拓氏 Twitter:https://twitter.com/t_kataoka_0629

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